しばらく俺は2人に何かをチェックされていた。


「気分はどう?」



「んー...特に何も感じないです」


「はは、そっか」


「いやでも...
何も分かんないっていうのは、変な気持ちです」


何も分からないのは、気持ち悪い。


頭の片隅にある何かが、俺が掴もうとした瞬間に逃げていく。


水の中に浮かぶ何か小さなものを手ですくおうとしている感覚。



「俺に何が起きたんですか?俺の名前はなんですか?」


医者は俺に話してくれた。


君の名前はツルカワリョウ。


漢字で書くと“鶴川陵”。


君は事故にあった。そして記憶を失った。