信号が青に変わった瞬間、夏子がこっちに向かって歩き出した。



その瞬間――


俺は夏子の方に向かって突っ込んでくる車がいることに気づいた。


何も考えずに駆け出した。


お願い、間に合って―


夏子も俺の異様な形相から車に気づき、その場に止まった。


どうやら動けないようだった。


無我夢中で夏子を向こう側へ突き飛ばした。



車のタイヤと地面が擦れる嫌な音がした。


と同時に、体に強い衝撃が走った。


「陵!」


夏子が俺を呼ぶ声。


何度も呼ばれて、返事がしたいのにうまく喋れない。