夏のカケラ

スタンドからも、大声援がカズに贈られていた。


カズは打席に立つ前に、バットのグリップでヘルメットの耳当てを二回叩く。

ベンチの全員が驚く。


カズは、バントのサインを出したのだ。


カズ・・・


僕はネクストバッターズサークルから、カズを見つめていた。

カズは僕に託したのだ。


カズは上手く、一塁側にバントを転がした。


ケンが三塁に滑り込む。


場内が湧く。


カズがベンチに戻りしなに、僕に親指を立てた。


僕は軽く頷いたのだった。


「三番、キャッチャー!一ノ瀬君!」


ウグイス嬢が僕の名前を告げた。

歓声が一際高く成る。