夏のカケラ

更に点が加算されて行く。生野学園はスタメンを下げて、控えが出て来ても、勢いは止まらない。


奥野が出て来た。

奥野が打席に立った時に、僕と目が合うと鼻で笑った。


僕は何も言えない。

世界がぐんにゃりと歪んで見える。


サインを出しても、ケンは首を振り続ける。

サインが決まらない。

僕は怒る元気も無くなっていた。

野手も誰も声を出さない。

ベンチも応援席もシーンと静まり返っていた。


ケンが涙ぐんでいるのがマスク越しに分かった。

ケン・・・


その時、奥野が独り言の様に呟いた。


「・・期待ハズレだな・・」