次の日の、11時頃。

私とユージはいつものように『高校生ルーム8』に居た。

フジヤマは車で帰宅中だからチャットには現れず、YUKIはいつも昼頃から顔を出す。


だから今『高校生ルーム8』に居るのは私とユージだけ。 なんだけど、昨日のことを話すには、この場所ではダメだった。

誰でも閲覧出来るこの場所で、個人を特定するような会話は出来ない。

だから私とユージは、2チャットへと移動した。




ユージ>じゃあサクラとフジヤマは、昨日あのあとも一緒に居たんだ?


サクラ>うん、海行って話してたんだ。


ユージ>なんもされなかった?w


サクラ>だいじょぶww




いつもと変わらない態度で私と話してくれるユージ。

内心、『前と態度が変わってたりして?』と心配してたけど、そんなことは全然なかった。

ユージはユージ。 そして、私は私だ。




サクラ>あ、ねぇユージはさ、どのくらい前からチャットしてる?


ユージ>ん? このサイトで?


サクラ>うん、このサイトで。


ユージ>4年、いや5年かな? 中1の時からだよ




私よりも1つ年上のユージ。

5年このサイトでチャットしてるんだ。




サクラ>あのさ、『ユキ』って知ってる? カタカナの、ユキ。 年齢はフジヤマと同じ23歳のはず




5年前からチャットしてるなら、もしかしたらユキさんを知ってるかも? と思った。

でも、フジヤマが最後に話したのは6年前だから……さすがに知らないかな……。




ユージ>5年前には18歳のユキ? んー、わかんないなぁ


サクラ>だよね、ごめんっ


ユージ>フジヤマと何か関係があるの?


サクラ>うん、フジヤマが恋してた女の子の名前なんだって


ユージ>マジ? 詳しく!!


サクラ>いや、私も詳しくはよくわかんないんだけどー、




と前置きをし、昨日聞いたことをユージに話していく。

フジヤマ、勝手に話してごめん!! と、心の中で密かに繰り返す。




サクラ>フジヤマがリアル高校生だった頃、いつもチャットで『ユキ』って人と話してたんだって


ユージ>フジヤマは、ユキに恋してたんだ?


サクラ>してたみたい。 でも最後に話したのは6年前って言ってたから……ユージがチャットを始める前ってことだね


ユージ>あぁー、それじゃマジでわかんねーや。 役に立てなくてごめんな?


サクラ>ううん、全然っ!! こっちこそ急にごめんねっ