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それから数日が経ち、いよいよ今日が、夏休み最後の日となった。




「で、夏休みの課題が終わりそうにない、と」

「……そうなんです。英語だけは、どうしても苦手で……」

「なんで前日に言うかなー。 もっと言える時間はあっただろうに」

「……ごめん」




明日はいよいよ始業式。

山のようにあった宿題を頑張って進めてきたものの、英語はどうしても理解が出来ず……。

結局そのまま、ほぼ手つかずの状態で両面印刷のプリントが5枚ほど残っている。




「チャットで毎日話してたのに、宿題のことなんか一言も言ってないよね?」

「だって、チャットは楽しく過ごす場所だし……」

「じゃあ電話とかメールは? 宿題教えてって言えば、いつでも教えることが出来ただろう?」

「うぅ……ごめんなさい……」




……ここは私の家の、私の部屋。

現在ユージと二人きり。 だけど、甘い雰囲気などこれっぽっちもない。


現在午前10時。 ユージが来てから1時間ほどが経つ。

最初は雑談しながら他のプリントをチェックしていたけれど、英語のプリントになった途端、ユージは眉間にシワを寄せた。




「俺、英語苦手なんだよね」

「えぇ!? じゃあこのプリントはどうすればいいんですかっ!!」

「……ご愁傷様?」




苦笑するユージを見つめながら、私の顔から血の気が引いていく。




「先輩なんだから、なんとかしてくださいよぉ……」

「そう言われても、無理なものは無理」

「……でも自分の方の宿題は済ませてるんでしょ?」

「俺はYUKIに聞いたもん。 ほら、この前俺の家に泊まった時に」

「うぅ、いつの間に……ズルい……」




私もYUKIに聞いとけばよかった。

メールとかしてガンガン聞いとけばよかった……。




「……今からYUKIに宿題のメールしたら、迷惑かなぁ……」

「その5枚のプリントをメールに写すだけで今日が終わりそうだね」

「うぅ……」




……絶望的だ。 終わった。

英語の怖いおばちゃん先生に怒られる……留年決定だ……。








「ねぇサクラ」

「なんですかー……」




膝を抱えてイジイジとしてる私に、ユージは携帯を見つめながら小さく言った。




「2分後にお客さんが来るよ」

「……へ?」