……これからユキさんのところに行くというのに、既に疲れが……。


場所を移動したことによって、さっきまで繰り広げられていた言い合いはなくなった。

というか、既に別の話題で盛り上がって笑ってる。

……さっきまでの雰囲気はなんだったんだ。

みんな相変わらず切り替えが早すぎです……。




「……まったくもう、どこが『演じてる』のよ」




ユージやYUKIと笑い合ってるフジヤマは、【フジヤマ】を演じてる感じではなく。

自然と、楽しそうに笑っている。


……ちゃんと笑ってるじゃん。

自分で気付いてないだけで、ちゃんと自然じゃん。

フジヤマは、やっぱりフジヤマだ。


そんな風に思いながら、フジヤマを見て私は一人、微笑んだ。








その後、私たち4人は新幹線に乗り……ユキさんが入院している病院がある市の駅へと降り立った。



病院までは徒歩10分ほど。

そこに近づくにつれ、あからさまに全員の口数が減ってきた。


先頭を歩くのはYUKI。 その表情は、後ろを行く私たちからはまったくわからない。

YUKIの後ろを歩くのは私とユージ。 いつからかわからないけれど、いつの間にか私たちは手を繋いで歩いていた。

ギュッと、強く。 不安をかき消そうとしているかのように。


そして1番後ろには、さっきまで馬鹿笑いしていたフジヤマ。 今は静かだ。

チラリと後ろを見ると、フジヤマは私に微笑んだ。
サングラスをかけているから、目が合うことはなかったけれどね。




「ここ」




ピタリと足を止めたYUKIが、大きな建物を指差した。

ここが、ユキさんの居る病院……。