「なんか、あっという間に時間が過ぎていったね」
「サクラとチャットしてる時はいつも時間が経つのが早いけど、今はそれ以上に早く感じたかも」
「うん、私も同じっ」
そんなことを話しながら、私たちは手を繋いで駅前へと向かっていた。
4時近くにもなれば、日差しはいくらか弱くなる。
それでも暑いけど……だいぶ過ごしやすくなったのは確かだから、周りを歩く人たちの足取りも、どこか余裕があるように感じられた。
私とユージも、足取りは軽いし声にも疲れはなかった。
そして、駅前ロータリーへ。
「あ、もう居る」
「え? あ、ほんとだっ!!」
黒い服を来たメガネ男子、YUKI。
久しぶりに見た彼は、私たちを見つけて微笑んだ。
「YUKI、早くない?」
「うん、実は20分頃に着いてた」
「え、それならそうと言いなよ。 4時って言ったからのんびり来ちゃったじゃん」
ユージの言葉に、YUKIは『ごめんごめん』と言いながらも笑っている。
そして私に視線を移し、メガネをクイッとしてから小さく言った。
「せっかくの二人きりを邪魔しちゃ悪いだろう?」
「え?」
「二人は手を繋ぐような仲になったってことだろ? だったら、二人きりの時間を多くしてあげるのは普通のことだと思うから」
「……あっ」
YUKIの指摘で、私とユージはとっさに手を離した。
そして、ほとんど同時に顔が赤くなる。
うわ、しまった……当たり前のように、自然と手を繋いだままだった。
「で、二人は付き合いだしたんだよね?」
「……お陰様で……」
「俺は別になんもしてないけどね。 あ、誕生日おめでとう。 いい誕生日になったね?」
ふふっと笑うYUKIに、私もユージもタジタジだ。
「あ、あのっ……YUKI、それで、話って……?」
顔の赤みはまだ引かないけれど、それでも何か言わなくては。と思い、YUKIを見つめる。
「あぁ……うん、じゃあ移動しようか」
「……って、どこへ?」
「サクラの家」
「あ、なるほど。 って、えぇ!?」
な、なぜに私の家っ……!?



