「どこか行きたい場所とかある?」
「と言われても……基本ヒッキーだし、この辺りのこと、あんまりわかんない……」
「同じく」
そんな風に言って笑うユージに、私も笑みを見せる。
「まぁ時間はあるし、のんびり見て回ろ」
「……うんっ」
歩き出したユージの隣に並んで私も歩くと、ユージはまた小さく笑う。
そして、私の髪をクシャクシャッとしたあとに空を見上げた。
「案外元気そうで安心した」
「……え?」
「だってさ、チャットだと顔わかんないじゃん? ほんとは無理して笑ってんのかな?って、心配してた」
「あ……なんか、ごめんね……?」
「いいよ」
とても優しい笑みを浮かべるユージ。
……ほんとはユージの方が、無理して笑顔になっていたのかもしれない。
私が笑顔で居られるようにって、無理して明るく振る舞っていたのかもしれない。
「……ありがとね、ユージ」
そう言った私は、そっとユージの手を握り締めた。
ごくごく自然に。
躊躇うことなくユージの手をギュッと握っていた。
そんな私の動作に、ユージは少し驚いたような顔をしたけれど。
すぐに笑って、また『いいよ』と言った。
暑い日差しを避けながら進む私たちは、お互いの手をしっかりと掴んだまま歩みを進めていった。



