真奈美のそのひとことに、担任は困ったように笑った。
何気なく、くっと首を伸ばして、メガネの奥の黒く稲光る目を捉える。
彼はわたしの視線に気がつくと、ふと真面目な顔をして、再度忠告した。
「とにかく、気をつけて」
2年生の時から担任を持ってくれているけれど、こんな顔を見たのは初めてだ。
いつも笑顔を顔面に貼り付けたまんま、生徒と関わりを持とうとしている人物であるのに。
これは本当に、大柴涼汰か? と疑うよりも早く、その笑顔は唐突に復活した。
「ほんなら、先生はおとなしく学校に戻って仕事してきます」
「頑張れ赤ペン先生~」
そういえば、一週間にわたって行われたテストが、本日無事に閉幕したところなのだった。
教師は今日から、一気に採点に追われる。
真奈美が、颯爽と去っていく大柴の背中に向けて、ぽつりと呟いた。
「柴くん、情報システムに授業こおへんかな」
そして意味ありげにわたしを見下ろす。
真奈美も、大柴の授業について、ある程度の「噂」を耳にしているのだろう。
