アブナイ教師の愛玩×彼女




邪魔だろうか。


そう思って、小さく会釈をして避けるも、その人は動かない。


ふと顔をあげると、男の人はにこりと微笑んで、わたしの肩にぽんと手を置くと、何も言わずにエントランスから足を遠ざけた。



「…………誰?」



暗い夜道によく映える白いスーツは、どれだけ遠くに行っても、建物に隠れるまで存在を強調し続けた。


もしかして、覚えていないだけで知り合いだったのだろうか。


さきほどの男の人の顔を思い浮かべる。


白いスーツに負けじと白い肌に、面長にツーブロックマッシュヘア、ほりの深い目元は、ぱっちり二重で、まつげがすごく長い印象を受けた。

背丈も見た目の年齢も、大柴と同じくらいだろうか。


果たして、自分にそんな知り合いが居たかなと思考を逡巡させるけれど、まったくもって心当たりがひとりもいない。


だいたい、このマンションは世帯ごとに部屋が割り振られている。おひとり様で住めるようなこじんまりとした物件ではないのだ。

よって、一人暮らしの人は居ないし、三十歳手前の人がまだ家族に世話になっているとは思えない。


きっと誰かと間違えたんだろう。


そっと左肩に触れて、首を傾げる。



「……帰ろ」



止めていた足を動かす。



ご飯を食べて、風呂にはいって勉強机に向き合う頃には、窓の外ではザアザアと雨がしきりに降っている音が部屋の中にまで聞こえてきて、げんなりした。