笑顔が爽やかで素敵なお兄さん、川野さんだ。
「川野さん、お疲れ様です、申し送りとくにないです」
「おん、わかった。ほな、はよ帰りー。雨ぽつぽつ降ってきよるわ」
「えっ」
「環ちゃん、雨嫌いやろ?」
ほら、ほら。
背中を押されてバックヤードに入る。もう一度彼にお疲れ様ですと声をかけて退勤を押すと、光の速さで着替えて店の外に出た。
「傘、パチってきた。環使うやろ?」
「ありがとう、真奈美」
彼女に手渡されたのは、透明のビニール傘。
ぱかっとそれを開けて、濡れそぼったアスファルトを踏みしめる。パラパラと雨がビニールにぶつかって滴り落ちる音が耳を静かに刺激した。
「ほな、また明日ね」
「うん」
真奈美が元気よく去っていく。その背中をしばらく見送って、わたしも帰路についた。
と、いっても、コンビニのすぐ隣にあるマンションに暮らしているのだけれど。店から家まで、徒歩三分。
スロープをのぼって、エントランスホールで傘をたたんでいると、目の前で白いスーツの人が立ち止まった。
