「知り合いか?」
「随分前の話だ。」
エリーザにイザヴェルは答える。
「教会の聖女だったメルを連れ出した。追っ手に捕まって、罰が下されるべき俺を……こいつは助けた。」
そう説明するとイザヴェルは少女を見た。
「あの時は、聖女で俺は悪魔だ。だが、今は違う。貴様は只の少女だ。」
「でも……」
「怒ってない。俺は、貴様を怒ってはいない。」
「ほんとう?」
「嘘をついたことがあったか?」
少女はふるふると首を振った。
「イブ。」
イザヴェルの名を呼ぶ。
「メル。」
少女の名前が返ってきた。
「……あえて、うれしい。」
「再会の喜びなど、薄れるだろう。」
イザヴェルは冷たく言う。
「だって、これからずーっと、一緒に居れるんだからね!」
続けて、エリーザが言った。
「!!」
少女の表情が明るくなる。
「っていうか。あなた、ちゃんと名前あるじゃない。」
「だめ、だめなの。……イブが、くれたから。」
「イザヴェル以外呼ぶなって?……そういや、イザヴェルも、“イブ”って呼ぶなって言ったことがあった。」
“どういう関係?”というような表情で少女に詰め寄る。
「兄妹……が、近いな。」
「おにいちゃん?」
少女はこてんと首を傾げた。
「……そういうことだ。」
妙に納得した様子でイザヴェルが言う。
「ずるい!!」
エリーザは暫く駄々を捏ねたそうだ。
ハルデンは呆れ顔で本を読み始めた。
それから、静かだった屋敷は偶然出会った悪魔と天使により、賑やかになった。
無表情だった“人形”から、少しずつ表情が芽生え、きゃらきゃらと声を発てて笑うようになるのはもう少し未来のお話。
「……面倒よの。」
めでたしめでたし。
「随分前の話だ。」
エリーザにイザヴェルは答える。
「教会の聖女だったメルを連れ出した。追っ手に捕まって、罰が下されるべき俺を……こいつは助けた。」
そう説明するとイザヴェルは少女を見た。
「あの時は、聖女で俺は悪魔だ。だが、今は違う。貴様は只の少女だ。」
「でも……」
「怒ってない。俺は、貴様を怒ってはいない。」
「ほんとう?」
「嘘をついたことがあったか?」
少女はふるふると首を振った。
「イブ。」
イザヴェルの名を呼ぶ。
「メル。」
少女の名前が返ってきた。
「……あえて、うれしい。」
「再会の喜びなど、薄れるだろう。」
イザヴェルは冷たく言う。
「だって、これからずーっと、一緒に居れるんだからね!」
続けて、エリーザが言った。
「!!」
少女の表情が明るくなる。
「っていうか。あなた、ちゃんと名前あるじゃない。」
「だめ、だめなの。……イブが、くれたから。」
「イザヴェル以外呼ぶなって?……そういや、イザヴェルも、“イブ”って呼ぶなって言ったことがあった。」
“どういう関係?”というような表情で少女に詰め寄る。
「兄妹……が、近いな。」
「おにいちゃん?」
少女はこてんと首を傾げた。
「……そういうことだ。」
妙に納得した様子でイザヴェルが言う。
「ずるい!!」
エリーザは暫く駄々を捏ねたそうだ。
ハルデンは呆れ顔で本を読み始めた。
それから、静かだった屋敷は偶然出会った悪魔と天使により、賑やかになった。
無表情だった“人形”から、少しずつ表情が芽生え、きゃらきゃらと声を発てて笑うようになるのはもう少し未来のお話。
「……面倒よの。」
めでたしめでたし。


