医師や歯科医師、弁護士や実業家といったエグゼクティブ男性の間で、密かに話題になっている女子教育機関が東京都下に存在する。その名も私立カメリア女学園という中高、短大の一貫校である。私立学校といえ、この学園は生徒から授業料を一切受け取らず、企業団体や実業家からの寄付によって運営されている。この学園には日本全国から選りすぐりの美少女たちが集められ、彼女たちは未来の良き妻良き母を目指し、やや保守的な教育を受けている。 

 20X0年代。日本社会の格差はさらに広がり、富める者はますます富み、貧する者はますます貧するようになっていた。志穂美や優二のような比較的裕福な階層の子女は、幼少から一流の教育機関で学び、知的な職業に就くことができる。その一方、下層階級の子どもたちは高等な教育を受けられず、貧困から抜け出すことができなくなった。十年ほど前に公立学校の授業料が無償化されたが、それが逆に制度の濫用を招き、公教育の質が低下した。労働者街の公立校はもはや不良の巣窟と化し、授業料がかからないのを良いことに怠慢な生徒が就職もせずに何年も学校に居座っていた。二十年以上続く慢性的な経済不況のせいで、高卒の求人状況は依然として低迷したままである。学校が荒れるにつれ企業からも敬遠されるようになり、貧困層の就職状況はますます厳しくなっていくのである。