そんな恵梨沙が中学からカメリア女学園に入ったのは家庭の事情ゆえである。恵梨沙が小学五年生の時、母親は日頃の不摂生がたたって重い肺病を患った。工場で働けなくなった彼女は生活に窮し、母子が住んでいた雇用促進住宅の安い賃料も払えなくなった。それ以後、一家は生活保護に頼って暮らしていたが、生命保険にも加入していなかった母親は自分の医療費を十分に出すことができなかった。そして一年後、恵梨沙の看病のかいもむなしく母親はその短い生涯を閉じた。  

 娘と同様に市営住宅で年金暮らしをしていた祖母には、恵梨沙を養う余裕がなかった。祖母は孫娘の将来を考え、噂で聞いた花嫁学校へ入れることを思いついた。聞くところによると、その学校では中等教育から短期大学の教育を無償で受けられ、卒業後は裕福な男性を結婚相手として紹介してもらえるらしい。入学の条件は容姿の良さだったが、ハーフの美少女として近所でも評判の孫娘なら入れてもらえるかもしれない。祖母の期待どおり恵梨沙は入学試験を突破し、カメリア女学園に入学することができた。