また、彼女たちは取り立てて人より容姿が良かったわけではなかった。あのクレオパトラも世間では絶世の美女だと言われているが、史実によると容姿は十人並みだったようだ。シンプソン夫人にしても人並みの容姿を持つ三十八歳の中年女性だった。男心をつかむには、容姿よりもむしろコミュニケーション能力であるとか、男を惹きつけるフェロモンの方が重要なのである。確かに、世の中には美人で聡明なのにくだらない男に引っ掛かった女がいる一方、十人並みどころかむしろブスの部類に入るのに、何故か仕事のできるいい男を捕まえた女もいる。例のコミュニケーション能力とフェロモンそして運が、いい男を捕まえる重要なファクターなのだろう。

 そういう観点からすると、カメリア女学園が見目の麗しい娘を集めるのは、あまり意味の無いことではないだろうかと恵梨沙は思った。世間には「美人は三日で飽きる」という言葉もあるくらいだ。美人は愛人要員にはなるかもしれないが、とり立てて花嫁の候補に相応しくはないのかもしれない。自信たっぷりに話す福芝女史の講義を聞きながら、恵梨沙は心の中でツッコミを入れる。どうせなら、妙齢の娘たちを集めて心理分析テストや個人面談を受けさせ、気配りができて愛想のいい、すなわち男性に好まれる性格の生徒を集めた方が、学園の実績も上がるのではないだろうか。