正論が志穂美を追い詰めた。彼女はさめざめと泣き始める。

「まさか、今日こんなことを言われるなんて思いもしなかったわ」

「すまない。でも俺の心はもう決まっているんだ」

 志穂美はナプキンで目頭を押さえる。これから彼女は時間をかけて自らの敗北を認めなければならないのか。そんなのは嫌だと思った。

「嫌だからね」

 志穂美は急に顔を上げる。

「私、絶対別れないから!」

 そう言って彼女は優二のもとから足早に立ち去った。それはまだドルチェのティラミスが来る前のことだった。