理香の表情は、最初にこの部屋に来た時のそれとは打って変わって神妙だ。

「この度は校則に違反してすみませんでした。そのことは反省していますのでどうかこの学校にいさせてください」

 理香は今までしたことがないくらい深くおじぎをする。

「芸能事務所には入るのではなかったのですか」

 佐島がたずねる。

「いいえ。それはやめました。先生が言われたとおり、やっぱり学校ぐらいは出ておかないといけないと思いました」 

「そうですか。ここに残るかどうかはあなた次第です。ただ、残るとなるとこちらのルールに従ってもらわないといけません。それはわかっていますよね」

「はい」

「言っておきますが、次に問題を起こしたらすぐにこちらを出ていってもらいます。いいですね。くれぐれも軽率な行動は慎むように」

「はい。わかりました」

「結構。それならあなたの希望を聞き入れましょう。さあ、教室に戻りなさい。もうすぐ授業が始まりますよ」

 佐島に促され、理香はそそくさと部屋を辞した。


 佐島学長は自身を寛容な人物であると見なしている。心の広さこそがこの学園の精神でもあるからだ。一度間違いをおかした生徒にも、救いの手を差しのべてやるのが教育者の務めであると信じている。