「優二。私はね、あなたと対等な夫婦になりたいの。あなただけじゃなく私も一生懸命働いて、お互いに助け合いながら家庭を築いていきたいのよ。あなたにおんぶに抱っこは嫌なの。あなただって穀潰しより収入があるパートナーの方がいいでしょう?」

「志穂美。俺には十分な稼ぎがある。俺は家庭をしっかり守ってくれる奥さんが欲しいんだ。ただでさえも仕事や勉強会で忙しい身なのに、家事を分担してくれだなんてたまったもんじゃない! 家では何もせずにリラックスしたいんだ。そういう癒しの空間を作ってくれる人がいいんだ」

「あなたの考えは古いのよ、優二。現代は男女共同参画時代よ。夫も家事を手伝わなきゃ家族を作る資格は無いのよ」

 志穂美は持論のフェミニズム論を展開する。

「古かろうが何だろうが構わない。俺は家を守ってくれる奥さんが欲しいの!」

 優二はそっぽを向く。

「いいわ。百歩譲って私が専業主婦になることにしましょう。それなら文句無いでしょ? 私たちには二年間付き合ってきた絆があるでしょ? だから私と結婚してよ!」

「それはできない」

 優二は首を横に振る。

「何でよ。そこまでその子に惚れ込んでいるの? でも、私を都合良く切ろうとしたってすんなり承知なんかしないわよ。そうは問屋が卸しませんからね」

「俺は菫ちゃんと結婚しなきゃいけないんだ。そうしなきゃいけなくなってしまったんだ」

「しなきゃいけなくなったって、まさかその子を妊娠させたとか……」

「違う。そういうわけじゃない」

「じゃ、何よ。いいこと。もはや私には何でも知る権利があるのよ。正直に話なさい!」

 志穂美に凄まれ、優二はおずおずと答える。