「参ったな。あんたみたいな女は初めてだ」

「ゴンちゃん。この子はお嬢様学校を出てるから普通の子とは違うのよ」

 権藤がぼやくと横からママが口を挟んできた。

「この子、堅気の世界に憧れていて、子どもが保育所に上がったら昼間の仕事に変わろうと思っているのよ。今まで何ヶ月間も町のハローワークに通っていて、この前やっと市内の中小企業に事務職で採用してもらえたのよ。だからサッちゃんはあとちょっとで見納めよ」

「へえ、この不況の時代にそりゃあ大したもんだな」

 権藤が感心する。

「だってあの子、短大で秘書課程を取っていたから秘書検定を持っているし、語学も勉強していたから英検も持っているのよ。マナー教育も受けているわ。子どもを孕まなかったら都会のエリートさんと結婚していたはずの子なんだから、見る人が見たらあの子の資質がわかるはずよ」

 ママは我が店の売れっ子を得意げに語る。

「へえ、そうかい」

 実業家の目が光った。