悄然とする優二の所に小男の友人が戻ってきた。優二が「モデル嬢はどうしたんだよ?」と訊くと、彼は「身長百八十センチの医者に取られた」と返してふて腐れる。何の魚も釣れなかった二人は仲良く連れ立って高級ホテルを出ていくことにした。

 噂に聞く美少女学園の中を垣間見ることができただけで話の種になるだろう。もしこのパーティーで誰か気に入った子に声を掛けたとしても、彼女とは結婚を前提とした真面目な付き合いをしなければならない。それを前提としたパーティーなのだから。独身貴族の二人にとってそういった付き合いは少々重いことだった。二人は「これでいいのさ」と自分に言い聞かせながら会場の出入り口をくぐった。

 友人が優二の脇を小突く。何かとたずねると、彼は目配せをして背後の方を見る。振り返ると二人の後ろには先ほどの美少女が立っていて、優二に「すみません」と声を掛けている。なんと、さっきまで必死で探していた娘が彼女の方から自分に声を掛けてくるではないか。彼女は「これ、あなたが落としたハンカチではありませんか」と訊いてくる。優二がうろたえながらうなずくと、彼女は「受付に預けようと思ったのですが、落とし主が目の前に現れたので声を掛けました」と言う。