My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ



そんな彼女と同じ様に、俺もそっと視線を外に向ける

目の前に沈む真っ赤に燃える夕日が、ヴェントスと同じ様に美しい



世界は同じモノに囲まれて動いているんだと思う

月や太陽や空気も、すべて同じモノ

どれだけ、その場所から離れようとも――



そう思うと、どこか幸せな気持ちになった



ヴェントス。

民は変わりなく暮らしているだろうか

王家に何か変わった事はないだろうか



「――・・・」



そこまで思考を巡らせて、不意に何か胸につっかえるモノを感じた



なんだろう?

俺は何か大切な事を忘れて――…




「――あぁ!!!」



静かな水の流れる音だけが聞こえる世界に

あまりにも不釣り合いな、俺の声が響く


その大きな声に驚いて、大きな瞳を更に大きく見開いたグレイスがこちらを振り返った