My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ



「この国の女王は、とても素敵な方なんだね」

「――」

「こんなにも、美しい国を治めているのだから」




ゆっくりと視線を彼女から、溢れる緑に映す


見た事もないほど、眩い世界を見て

心から、そう思う



その国の王は、国そのものを表すと聞いた事がある

ならば、この美しい国を造った女王はきっと素晴らしい方だろう



俺の言葉を聞いて、ゆっくりと閉じていた瞳を開いたグレイス

しかし、その瞳を開けた時には

その表情は変わっていた



どこか、悲しみに満ちた――顔





「女王は..月の様な御方です。暗闇の中でも輝き続ける――満月の様な御方」

「――」

「しかし...その輝きは今、雲に覆われています」



小さくそう言って、瞳を伏せてから外の景色に目を移したグレイス



悲しみに満ちた瞳で、目を細めた