My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ




「――そう..か」



その言葉に嘘がないと分かった瞬間

そんな言葉が力なく落ちた




「えぇ・・・」

「あの怪我だ...無理もない」



あの時の父の出血は尋常じゃなかった

冷静に考えれば分かる事

今、生きている事すら奇跡に近い




「――ありがとう」

「――」

「父を救ってくれて」




最後にギュッと父の手を握りしめてから、再び布団の中に、その手を戻す

瞳を閉じたままの父を見下ろして、ぐっと一度拳を握った


物音ひとつしない静寂の中で微かに聞こえる父の呼吸の音

その音を確認して、少しだけ握っていた拳を緩めた



生きてる―――

父はちゃんと、生きてる