My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ



訳が分からず言葉を無くす俺に、今にも消えそうな声で逃げろと言い続ける父

そんな中でも咽返っては血を吐く父を見て、急いで止血しようとした

その時――




「――っ!」



一瞬風が吹いたと思ったら、辺り一面霧に覆われた

緑に溢れていた世界が、一気に白の世界に変わる


身の危険を感じて、途端に勢いよく剣を抜いた



何だ?

どうなってる




「誰だっ!」




ドクドクと暴れる心臓の下で、人の気配を感じてそう叫ぶ

すると




「ここが安全だと、何故そう思う」



霧の中から突然聞こえた声

低く、透明なその声