My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ





「ハァハァ――・・・」



どこまでも続く平原を抜け、ようやく森の中まで入れた

後ろを振り向いても、もう追手の姿はない




「父さん―――」



ダラリと首を下げて、馬に座る父

息はあるが、出血が酷い



急いで馬から飛び降り、父も馬から降ろす

ドサっという重い音と共に、崩れ落ちる父




「父さん!! しっかりっ!!」




大きな声で父に呼びかけて、血止めの薬を飲ませる

すると




「ァ...レ...」

「父さん!?」



ゴクンと弱弱しく水を飲んだ父が、擦れた声で俺の名前を呼ぶ



「もう大丈夫だ。追手はこない」



父の片手を握り、大声で父に叫ぶ

でも――



「――ダ..メだ...こ..こは」

「え?」

「も..りを...でろ」



真っ赤に染まった手を俺に伸ばして、途切れ途切れに言葉を落とす父

その言葉の意味が分からなくて、眉間に皺をよせる



森を出ろ!?

どういう事だ!?



「父さん! 外には、まだゲイルがいる。ここの方が安全だ!」

「ァ..レ..ン―――に..げろ」



俺の言葉を無視して、必死に言葉を落とす父