My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ



―――気のせいか・・・?



息を殺して、再び辺りを見渡す

自分の心臓の音だけが、耳の奥で鳴る

握った剣に微かに汗が滲む



しかし、変わらず暗闇の中で動く影もなく

変わった様子はない




やはり、気のせいか―――




そう分かった瞬間、小さく息を吐き

張っていた気を緩めて、握っていた剣から手を下ろす




「寝ぼけてたのか..」




自嘲気に笑って、そう言った



次の瞬間―――