My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ



「残念だけど、遠慮しておくよ」




詰め寄ってきた女性の胸元に銀貨を差し込み

その女性の隣で眠る父を担ぎ上げる




「いい情報をありがとう」




ニッコリと笑ってそう言う俺を睨みつける彼女

さっきまでの妖美な雰囲気は微塵もない




「私を抱かなかった事、後悔するよ」

「後ろは振り返らない主義なんだ」




恨めしそうに俺を見つめる彼女に、そう言って

賑やかな店を後にした






「――なぁ~んだ。あの女の所に行っても良かったんだぞぉ」




パタンと大きな木の扉を閉めた所で

俺の肩に体を預けていた父が、ろれつの回らない口でそう言う