「残念だけど、遠慮しておくよ」
詰め寄ってきた女性の胸元に銀貨を差し込み
その女性の隣で眠る父を担ぎ上げる
「いい情報をありがとう」
ニッコリと笑ってそう言う俺を睨みつける彼女
さっきまでの妖美な雰囲気は微塵もない
「私を抱かなかった事、後悔するよ」
「後ろは振り返らない主義なんだ」
恨めしそうに俺を見つめる彼女に、そう言って
賑やかな店を後にした
「――なぁ~んだ。あの女の所に行っても良かったんだぞぉ」
パタンと大きな木の扉を閉めた所で
俺の肩に体を預けていた父が、ろれつの回らない口でそう言う



