My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ




「見ない顔だね」



賑う店の中を見渡していると、急にそんな声が聞こえた

ゆっくりと横を向いていた顔を前に向けると、潰れる父の横に座る女性がいた





「旅の途中でね」

「ふ~ん。どうりで」




微かに目を細めた俺を値踏みする様に、上から下まで舐める様に見つめる女性



胸元の大きく開いた緑色のドレスを着て、片手に酒を持っている

頬が赤い事から、相当飲んでると思われる




「君は、ここの国の人?」

「君だなんて止めてよ。私はミランダ。この酒場で働いてんのさ」



そう言って、ニタッと笑った女性

見せつける様に、胸元を寄せる




「そう――いい店だ」

「ここらじゃ一番大きな店さ。ところで、旅人さんはどちらまで行くんだい?」




ゴクゴクと酒を飲みながら、妖美な笑みを浮かべて顔を近づけてくる女性

甘い香水の香りが鼻につく