My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ







真っ赤な夕日が平原に沈む

辺り一面、燃える様な赤に照らしだされる




「――ここだ。炭鉱の国。マルス」




小高い丘の上からその国を見下ろして、そう呟いた父



カンカンと金属を叩く音が辺りに響く

黒い煙が立ち上がり、街を覆う



風に乗って香る、金属の焼ける匂い

どこからともなく聞こえる、男達の笑い声

数年前に訪れた時と変わらない国の姿に、なぜか嬉しく思う





「今日は飲むか。アレン」

「父さんには負けないよ」




ニタッと笑った父に向かって、拳を突き出す

そんな俺の姿を見て、同じ様に拳を突き出した父に自分の拳をぶつける




「行くぞ」

「あぁ」




そして、勢いよく丘を下った