My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ




「父さん。このまま真っ直ぐ西へ」

「あぁ。夕方にはマルスの国に着く」

「分かった。そこで宿を」




マルスはヴェントスから一番近い国

馬で駆けて、半日もかからない



小さな国だが、豪快な男の民が多く住み

酒場が街にひしめき合い

夜は毎夜賑っている



喧嘩っ早い所があるが

愉快で気さくな人達ばかりだ




「そこで情報を少し集めよう」




馬の走る音の上でそう叫ぶ

同じ意見なのか、父も小さく頷いて

馬の腹を蹴り、スピードを上げた