My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ








夜がきた―――

待ち侘びた、夜が



こんなにも日が暮れるのが楽しみだった事は初めてだ


部屋から見える夕日を眺めて

星が出るのを、じっと待った



そして、月が昨日と同じ位置になったのを見て

そっと部屋を抜け出した






静寂の宮殿の中を、音も無く進む

長い廊下を駆けて

細い階段を上る



徐々に月明かりが俺の顔を照らし始める

それと比例する様に、俺の頬が上がっていく




ハァハァと荒い息使いだけが世界に満ちる

高揚した心が足を急かす



目の前に広がるのは

変わらず美しい花畑と

空に輝く銀の月



そして



美しい、あのドーム型の建物の中で腰かける



彼女だけ―――