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夜がきた―――
待ち侘びた、夜が
こんなにも日が暮れるのが楽しみだった事は初めてだ
部屋から見える夕日を眺めて
星が出るのを、じっと待った
そして、月が昨日と同じ位置になったのを見て
そっと部屋を抜け出した
静寂の宮殿の中を、音も無く進む
長い廊下を駆けて
細い階段を上る
徐々に月明かりが俺の顔を照らし始める
それと比例する様に、俺の頬が上がっていく
ハァハァと荒い息使いだけが世界に満ちる
高揚した心が足を急かす
目の前に広がるのは
変わらず美しい花畑と
空に輝く銀の月
そして
美しい、あのドーム型の建物の中で腰かける
彼女だけ―――



