My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ



「た…ただ単純に驚いただけ! じゃぁ・・・いずれグレイスはウィスタリア家の長になるの?」

「―――はい。いずれは」




後ずさりする俺の顔を見て、納得いかない様子だったけど

最後にポツリとそう呟いたグレイス



そして、薄い衣を翻して

再び、活けている最中だった花の元へ向かった



その後ろ姿を見て、これ以上深く追求されなかった事にホッとして、胸を撫で下ろす

すると




「たまに、分からなくなります」




一瞬沈黙が続いた部屋に、グレイスの声が静かに落ちる

活け終わった花をそっと撫でて、その瞳を伏せている



すると、柔らかい風が部屋の中に入ってきて

彼女の絹の様な髪をなびかせる