「なぜです?」
父の顔を見ながらそう言った俺の横に近づいてきて、首を傾げてそう問うグレイス
キョトンとした顔で、俺の目をじっと見つめている
いつもと変わらない彼女の柔らかい雰囲気に、少し胸を撫で下ろす
急にそんな事を聞いてきた俺を、今の所不審に思っていない様子だ
「いや...ただ、なんとなく」
歯切れの悪い言葉に、更に不思議そうな顔をする彼女
そんな無言の視線を感じて、聞いた事を少し後悔した
彼女の名前を言って聞けば早いのだろうけど
なんでだろう・・・
彼女の事は、誰にも知られたくなかった
もし知られたら、二度と会えない様な気がして



