My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ



「――ゲル様、アレン様。お出かけで?」



大きな城門の側まで馬で駆けていくと、見慣れた門番達が姿勢を正し、俺達に一度頭を下げた




「あぁ。二週間ほどで戻る」

「その間、国は任せたよ」

「はっ。どうぞお気をつけて」




頭を下げる門番達に見送られて、馬を進める

後ろを振り向けば、蟻一匹入る事も出来ない様な隙間一つない巨大な城壁が見えた




崖の上にそびえる城を抜け

民で溢れる街を抜け

緑に溢れた森を抜け

絶えることなく流れる、川を抜ける



徐々に頬を撫でる風が優しくなる

父と並んで森を抜けると、一面何もない平原に出る



――ヴェントスの国を抜けた証拠だ




途端に一気に神経を研ぎ澄ます

この先は、何が起きてもおかしくない