My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ




「城を頼む」

「承知いたしました」




父の言葉を聞いて、深く頭を下げた女官達

その姿を横目に、再び馬を蹴った




馬の駆ける音が石畳の地面に反響する

時折通り過ぎる侍女や衛兵が頭を下げて、俺達の行く道を開けていく




海から流れてくる強い風が、背中のローブをたなびかせる

少し先を走る父の腰にかかる剣が太陽の光を反射して、キラリと何度も光輝く



春の訪れを感じささる王宮の中庭には、緑が少しづつ芽吹いてきている

俺達が帰る頃には、この庭も花々で溢れている事だろう



そう思うと胸が温かくなって

思わず笑みが零れた