My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ



俺の言葉を聞いて、一層瞳の力を強めた彼女

まるで睨む様な鋭い瞳

その表情を見て、もう一度深く笑う




「でも、いい腕はしてる」




息の下で小さく笑った後、剣を花畑に置いて一気に彼女の腕を引いて立ち上がらせる

そんな俺の行動が不意打ちだったのか

彼女は勢いを殺す事なく、俺の胸に飛び込んできた



その瞬間、ふわりと長い髪が宙に弧を描く

羽の様に軽い衣が幾重にも、広がる

その光景に無条件に胸が高鳴った




「――っ!」




それでも、すぐに俺の胸に手をついて距離を取った彼女



その瞬間、ふわりと胸いっぱいに広がる花の香り

その香りに、胸が詰まる



そして一瞬だけだが、胸にあった温もりが消えた事に寂しさが募る