「心配はいらない。それに、こんな時の為に鍛えているからね。ねぇ、父さん」
「あぁ、問題はない」
振り返った俺に、ニッコリと微笑んで一度頷いた父さん
そんな俺達の姿を見て、少しだけ下げた眉を上げた女官長
「ご武運をお祈りしておりますわ」
「ありがとう」
「何かありましたら、すぐにでも書簡でお知らせくださいな」
俺達の馬にそっと駆け寄って、心配そうに俺を見つめる女官長
彼女がここまで心配するのは、俺が彼女に本当の息子の様に可愛がられているから
昔から王宮に務めている彼女は、同じ様に幼い頃から王宮に務めている俺の事をそれはそれは可愛がってくれた
だから俺も母親の様に慕っている
「必ず帰る。心配はいらない」
「信じて、お待ちいたしております」
「あぁ。行ってくるよ」
俺の手を一度ギュッと握りしめた彼女に微笑みかける
父と同じ様な年齢の彼女は、心配そうな顔ながらも一度深く頷いて一歩後ろに下がった



