My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ



カツン―――




静寂の中で、足音が反響して響く

その音さえも美しく響いて

鼓膜を震わせる



銀色に染められた世界は、美しく

昼間とは違った『光の国』となる



辺りに人は、いない―――



足音を立てない様に、駆けていく

背に広がるローブが静寂の中ではためく




「階段だ」




以前迷い込んだ、あの螺旋階段の前で立ち止まる

人、1人入るのがやっとの小さな階段



あの花畑へと繋がっている――



彼女が、またあそこにいるとは限らない

それでも、あの場所しか

俺の待つ場所はない



ぐっと拳を握りしめて

階段を駆け上がった