My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ



目の前に広がる景色は、昼間の様に色に溢れたソレとは違う



森は黒に覆われ

月明かりに照らされた川だけが、目の前に広がっている



見えるのは、黒と銀だけ――




何かを考えるわけでもなく、ただぼんやりとその景色を見ていると

ゆっくり顔を照らす光が訪れた

どこか優しい、明かり。




その先に視線を向けると

眩しいくらいの月が雲の割れ目から顔を出していた




「綺麗だ」




そう呟いて、ベットから抜け出して空を見上げる



ベール越しに見ない月は、やはり一段と美しく

眩い金色に輝き世界を照らす