「あ...いや。ただ、なんとなく。そう思っただけで..」
慌てて言葉を繋げる
南の塔に行った事がバレたら、マズイ
勘のいいグレイスだから、少しでもボロを出せば、たちまちばれてしまう恐れがある
焦る俺の姿を見て、より一層首を傾げたグレイス
しかし、ゆっくりとその口を開いた
「美しい、御方ですわ」
「――どんな風に?」
「どんな風にと言いましても...私も数えるぐらいしか、お会いした事がないものですから」
「そう...」
グレイスの言葉を聞いて、小さく呟いた俺の顔を見て、グレイスがクスクスと笑う
「ただ、言える事はただ1つです」
「――?」
「きっと、お会いしたら、アレン様は恋をなさる」
「え...」
「この世のすべての美しさを、身に纏った様な御方ですから」
そう言って、グレイスは深く微笑んで
それ以上は教えてはくれなかった



