My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ



「あ...いや。ただ、なんとなく。そう思っただけで..」




慌てて言葉を繋げる

南の塔に行った事がバレたら、マズイ

勘のいいグレイスだから、少しでもボロを出せば、たちまちばれてしまう恐れがある



焦る俺の姿を見て、より一層首を傾げたグレイス

しかし、ゆっくりとその口を開いた




「美しい、御方ですわ」

「――どんな風に?」

「どんな風にと言いましても...私も数えるぐらいしか、お会いした事がないものですから」

「そう...」



グレイスの言葉を聞いて、小さく呟いた俺の顔を見て、グレイスがクスクスと笑う




「ただ、言える事はただ1つです」

「――?」

「きっと、お会いしたら、アレン様は恋をなさる」

「え...」

「この世のすべての美しさを、身に纏った様な御方ですから」




そう言って、グレイスは深く微笑んで

それ以上は教えてはくれなかった