My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ



「グレイス」




ゆっくり振り返ると、そこには柔らかく微笑むグレイスが立っていた

その笑顔に答える様に微笑むと、彼女は音も無く俺の隣に歩み寄ってきた




「まだ、お目覚めにはなりませんか」

「あぁ・・・」




父の姿を見て、伏し目がちにそう言ったグレイス

そんな彼女の姿を見て、本当に心配してくれているのだと分かって、なんだか嬉しく思う



すると、持っていた花をそっとテーブルに置いた彼女

淡いピンク色の美しい大輪の花




「森に咲いていた花ですわ」




その花に目を移してから礼を言うと、嬉しそうに深く頷いたグレイス

そして真っ白な手で父の手を握って、ゆっくりと目を閉じた