「名は――」 「去れ」 彼女に近づこうと、足を一歩前に出して頼りない声を落とした瞬間 強い言葉が返ってくる その言葉に、思わず出した足を止めた くっと細い顎を引いて 真っ直ぐに俺を見つめる彼女 美しいターコイズの瞳が、揺れる事なく俺を見据えている 「俺は――っ」 その瞳に吸い込まれそうになりながらも声を出した瞬間 再び、強い風が吹いた その強さに、反射的に目をしかめる そして、瞬きをした瞬間 ――彼女の姿は、そこになかった