My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ



つい最近まで、自分が戦に出ていた事すら遠い昔に感じる

そんな事を思いながら、小さく息を吐いた

すると





「そんなに暇なのであれば、剣の腕を磨いたらどうだ?」




不意に透き通った声が背を叩いた

驚いて後ろを振り向くと、初めて見た時と同じ姿で、こちらを見下ろすホリスがそこにいた

肩に美しい弓矢がかけられている




「――失礼。腰に付けている物が目に入ったのでな」




何も言わない俺に、ふと目線を俺の腰にかかる剣に向けるホリス

そして、俺の言葉を待つ前に言葉を続けた




「そなた――ヴェントスでは、どの様な働きをしていた」




向き直った俺に、どこか温度の感じられない話し方で言葉を落とすホリス

ゆっくり俺に近づいてきて、その美しい瞳で俺を見つめた




「我が王国では、守護を任されていた」




そんなホリスに、同じ様に表情を崩さずにそう返す

すると、ピクリと眉を微かに動かしたホリス

しかし、その冷たい表情は変わる事なく俺に注がれる