My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ







―――この国に来て、二週間が過ぎた




美しい景色に囲まれて過ごす日々は

恐ろしいくらい、ゆっくりと流れた



毎日、美しい景色を眺めて

ふと訪れるグレイスと言葉を交わして

深い緑に体を埋める




父は、まだ目を覚まさない――









「――暇だ。」



王宮の美しい噴水の側で、空に流れる雲を眺めていると無意識に声が零れた



ここに来る前は、バタバタと過ごしていた

それこそ、休む暇もないほど



だから余計に、今のこの平穏な日々が恐ろしく物足りなく感じる