My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ




「本当に分かってらっしゃいますか?」

「分かってるよ。グレイス」



疑わしい瞳で俺を見つめる彼女にニッコリ笑って答える

すると、呆れた様に小さく溜息を吐いた彼女




「――この約束は決して、お忘れにならぬよう、心得てください」




そう言い切った後、ふわりと衣を翻して先を急いだ

が―――




「道、間違えてるよ」

「――」

「俺の部屋は、こっちだ」

「――意地悪な、御方」




最後に小さな声で、恨めしそうにそう言った後

俺の前を風の様に通り過ぎていった




その姿を見て、なんだか嬉しく思う




やっぱり、俺は

こっちの方がいい―――