「本当に分かってらっしゃいますか?」
「分かってるよ。グレイス」
疑わしい瞳で俺を見つめる彼女にニッコリ笑って答える
すると、呆れた様に小さく溜息を吐いた彼女
「――この約束は決して、お忘れにならぬよう、心得てください」
そう言い切った後、ふわりと衣を翻して先を急いだ
が―――
「道、間違えてるよ」
「――」
「俺の部屋は、こっちだ」
「――意地悪な、御方」
最後に小さな声で、恨めしそうにそう言った後
俺の前を風の様に通り過ぎていった
その姿を見て、なんだか嬉しく思う
やっぱり、俺は
こっちの方がいい―――



