My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ



「では、せっかくなのでご忠告させていただきます」



ゴホンと改まって、場の空気を変えた彼女に向き直る




「――言葉、気にしなくていいって」

「これが、普通なのです」




首を傾げた俺に、クスッと笑ってからそう言ったグレイス

それでも、俺との間にあった小さな壁は無くなった気がする




「決して、南の塔には近づいてはなりません」

「南の塔?」

「王家が住まわれている場所です」

「なるほどね」




顎先に手を当てて、そう言う俺を見て

訝しげな表情で、首を傾げたグレイス



その仕草に気づいて

俺もグレイスと同じように首を傾げる