My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ




「アレン様は、どこか抜けていらっしゃる」



なんだか恥ずかしい気持ちになりながら歩く俺を見て

細い指を口元に当てて笑うグレイスがそう言う




「それは、グレイスも同じだろ?」

「――?」

「道。間違ってる」




少し見慣れた道に差し掛かって、思っていた道とは正反対の方向に足を進めたグレイスにそう言う



すると、キョロキョロと辺りを見渡して、頬をピンクに染めた彼女

そんなグレイスを見て、ふっと微笑む




「あと――俺の前で、言葉は気にしなくていいよ」

「――それはなりません」

「いいから。それに、そっちの方が本当のグレイスになれるだろ?」




少し微笑んだ俺に目を見開くグレイス

そして、息の下でふっと笑って



「本当、おかしな人」




そう言って、笑った