My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ







「まさか、自分が宮殿の中にいたとはね」




驚きながら、その美しい建物を見上げる俺を見てクスクスと笑うグレイス




「お気づきにならなかったのですか?」

「外に出た時は、周りの景色に目を奪われていたから」




そう言った俺を、もう一度可笑しそうに笑うグレイス

そんな彼女を横目に、足を前に進める




そう。

俺がここ最近過ごしていたのは、王宮の中だった



どんどん王宮に向かって、足を進めるグレイスに不思議になって声をかけたんだ

すると、キョトンとした顔で




「帰るのですよ?」



と言うもんだから、いよいよ訳が分からなくなった