「日が落ちると、民は怖がって外には出ません。姫様もまた、常に命を狙われ容易に城の外には出られないのです」
「――」
「それがまた、姫様の心を蝕んでいるのです」
「騎士達は?」
眉間に皺を寄せた俺に、悲しそうに首を横に振るグレイス
「きりがないのです」
「どういう事?」
「追い詰めても追い詰めても、彼らはやってくる」
深い森に覆われた、この国
大きな木々は、その姿を隠すには格好の場所
「この森の深さが、逆に仇に」
そう言った俺の言葉に同意する様に、コクリと頷いたグレイス
それでも、きゅっと口を結んでから柔らかく笑った
「それでも、もうすぐです。ガスパルの残党も数えるほどになりました。――あと、少しです。元のアネモスに戻るのは」
まるで自分に言い聞かせる様にそう言って、俺の言葉も聞かずに歩き出したグレイス
そして、目の前にそびえる城を見つめてから
「帰りましょう」
静かに、そう言った



